一度は東京でキャリアを築いたものの、「いつか市原で自分の仕事を」という熱い思いを抱きUターンした岡本充弘さん。好きな「もの」への情熱と、地域の人々との出会いが結実し、牛久商店街に古物店「ankoru(アンコール)」を開きました。ここは、ものを大切にしたいという想いと、新しい挑戦を応援する市原の魅力が凝縮された、地域の資源を次に生かす場所です。 取材日 2025年11月12日/文 Akari Tada
ankoru
年齢 31歳
移住時期 2025年2月(Uターン)
出店エリア 南総地区


Uターンは必然だった
岡本さんは市原市の郡本で育ち、大学進学で市原を離れましたが、「将来は市原に戻って何か仕事をしたい」という思いは、20代の頃からずっと持っていました。
その強い思いのきっかけは、地域の活動に熱心なお父様の存在。「父が消防団やお祭りなど、仕事とは別にずっと地域のために活動しているのを見て育ったので、僕も自然と『いつか市原に戻って何かしたい』と思っていました」と話します。
故郷への愛着と、地域に貢献したいという気持ちが、岡本さんの行動の土台になっています。
大学を卒業してすぐ、自動車メーカーの営業として東京で働き始めましたが、忙しい日々の中で、「本当にやりたいこと」を真剣に考えるように。そこで思い出したのが、学生時代から好きだった美術やデザインの世界でした。
思い切って、働きながら週末は専門学校でデザインを学び、憧れのインテリアデザインの会社へ転職。内装設計だけでなく、社長のアートコレクション管理にも携わり、質の良いものに触れる経験をたくさん積みました。その後、働き方を考えて住宅リフォームの設計へ転職。この「休みもしっかり取れる会社」での仕事が、プライベートを充実させ、市原での活動を本格化させる大きなきっかけになりました。
イベント出店から「アンコール」へ
市原に戻るという目標を具体的にするため、岡本さんがまず始めたのは、市原のイベントの手伝いとして参加することでした。地域の集まりに積極的に顔を出すうち、市原を面白くしようとする人たちと次々と知り合い、活動の輪が広がっていきます。
「自分はものが好きで、休日には妻と雑貨屋さん巡りをよくしていました。市原で自分が何かしたいと考えた時、古物や雑貨を扱うお店を市原でやりたい、と思ったんです。」

その「やりたいこと」を試しにやってみるという流れで、On Re.Cafeさんの軒先を借りて、まずは自分の持ち物を売る小さな出店をスタートさせました。
「実際にやってみて、『めっちゃいいな』と思えたんです。買ってくれた人が喜んでくれた経験が、『アンコール』の確かな原点になりました」

「アンコール」という名前は、「ものがめぐる」「もう一度」という意味と、奥様にゆかりのあった音楽用語から採用。デザインの先生にロゴをお願いし、活動は市原のイベント出店へと広がりました。
地域資源の循環拠点「POST」
イベント出店を続けるうちに、「お店を持ちたい」という思いが強くなり、仲間と物件探しを開始。開宅舎さんとも協力し、地域のものがめぐる場所として「牛久商店街」が一番いい、という結論に至ります。
そして、2025年10月、イベント仲間である3社(ankoru、energy closet、開宅舎)が共同で運営する古物販売の場所「POST」を牛久商店街のはずれにオープンしました。


「古物、古着、空き家から出たもの(=古いもの)という点で繋がった3社が集まることで、地域の資源を次に生かす仕組みが生まれています。大事にしていたけど、もう使わなくなってしまったもの。そういうものを次に使ってくれる人に届けるお手伝いが出来たらいいなと思っています。」

オープンしてから地域の方に少しずつ知ってもらい、今では日常的にもう使わなくなってしまった古いものを持ち込み、地域のものが巡り始めています。
市原から、遠方からも「わざわざ来たくなる」スポットへ
「POST」の今後の目標は、遠方からの集客を増やすことです。
「地域の方だけでなく、千葉や東京から、わざわざ来てくれるようなお店にしたい。ここを目指して来てくれた人が、牛久商店街や市原のほかの場所も巡ってくれるような、市原を代表するスポットの1つになれれば嬉しいです」

岡本さんは、自身の経験から、地域で何かを始めたい人に向けてメッセージを送ります。
「市原は応援してくれる人が多いし、田舎だからこそ小さくスタートできるチャンスも多い。やりたいことがある人は、ぜひ市原に来て、自分のペースでやってみたらいいと思います」

一度は東京でキャリアを積んだ岡本さん。現在は「楽しいからできている」と話すankoruの活動を通じ、自身の喜びと、地域を良くしたいという思いを重ねています。古いものに新しい価値を吹き込む「アンコール」が、市原の未来をどう彩っていくのか、これからが楽しみです。
ankoru/POST
〒290-0225 千葉県市原市牛久650−1
OPEN : 毎週日曜日11:00-16:00
【Instagram】ankoru I 古物店
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